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2011年6月15日の新聞ニュース2つ 

わけあり久々に情報更新をすることとしました。 

先日、2011年4月末に学習院大学で開催されたアーカイブズ学会で話したことがきっかけとなって、6月15日の日経新聞全国版最終面文化欄において私の研究が取り上げてもらえることとなりました。目を付けていただいたM記者には感謝ですが、それよりも、私のようななんだかよくわからない若者の研究報告にまでアンテナを張っているプロの仕事に大変感心しました。

家では長年日経を取っていて、この欄を楽しみにしていたのですが、そこで取り上げられる特殊な人々の方向性と自分自身はけっこう重なっているので、将来的ここに登場するだろうと前々から予想していたのですが、これほど早くに出してもらえるとは、「読モ」になったと喜ぶ以上に、今後の展開に責任を感じざるを得ません。

そして同日、2011年6月15日付でもう一件良いニュースがありました。

私が「この人」と思ってバーリ音楽院とバジリカータ大学大学院で薫陶を受けてきた私の師匠のディンコ・ファブリス先生が、国際音楽学会IMSの次期(2012-2017)会長に選出されたというニュースが、イタリアの音楽新聞に発表されたのです。
http://www.giornaledellamusica.it/news/?num=108310

イタリア人初、そして、最年少の快挙です。イタリアの史料研究を専門とするファブリス先生が世界の音楽学者の顔となることに、ドイツ音楽(あるいはドイツ系音楽学)中心からの脱却や、イタリア系史料研究についての見方が世界的に変わってきていることを象徴するかのような出来事です。
最近、国内の中堅どころの一部には、音楽学が文献学的な知とメソッドをベースにした学問領域であること(さえ知らずに?)疑惑を挟んでいる方がいますが、世界的にみたら、やはりこのようなメソッドが主流の地位を堅持した形となり、この面でも心強く感じます。

音楽学を勉強するために、私がウィーンでもパリでもボローニャでもローマでもなく、バーリ音楽院!を選んだのも、すべてはディンコ先生に師事するためで、ほかに外国人留学生もいなかったことから私にもずいぶん良くして下さいました。そのようなわけで、授業中(といっても大幅な遅刻は当たり前で実質時間はほとんどなかったような気がしますが)はもちろん、学校から車で送ってもらったり、レストランで一緒に食事をしてお酒を飲む、自宅に招待してもらったり、フランスやオーストリア、スペインにヴェネツィアにバーリ、クロトーネ、東京などでの学会や演奏会など、本当に思い出せないほど数々の場を楽しく共有させてもらうことができました。学会で一緒に行ったトゥールで、彼が道に落ちていたバナナの皮に滑って転んで、あまりの可笑しさに再現撮影会までしたことなど、嘘のような本当の話です。 

身近にいたことで、音楽学とは何か、ということを超えて、何をどう研究をするか、そして、どう論敵や同僚と付き合うか、音楽学者とはどうあるべきか、などわずかながら”盗み知る”ことはできましたが、しかし、周りでその匂いを感じるだけで頭がよくなった気をさせるほどにとびきり優秀で魅力的な先生の姿に、自分だと10回ぐらい生まれ変わっても彼のようにはなれないことを実感することばかりでした。それでも世界のトップの近くで長年にわたって”徒弟”をさせてもらえたことに、本当に幸運を感じています。

特に、「音楽学は文献学」、「一つでいいから負けない専門を持てばよい」、「理論と実践の融合」、「楽譜と絵画は過去を3次元に再構築して解読する貴重なデータベース」、「全部の史料を見る」、「足を使う」 、「酒は飲む」 といった彼の考え方や旺盛な行動力について、国際学会の会長がしているのだから、というからではなく、血肉となった経験、言葉として私の「経典」とすることができたことが、留学の一番の大きな成果だったとすらいえましょう。

このニュースが発表された後、少し彼をまねて、京都での授業を終えた後、東京で学会のハシゴをして、帰阪後、講演会をこなしたと思ったら、すぐに寝込んでしまったのはやはり身の丈に合わないことをしようとしたからなのでした。

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